書評20180111:大黒屋光太夫(吉村昭)
書評っていうかw
偉そうに書評とか言ってんじゃねーよ感、自分でもあるんですけど。
ちょっと適切な言葉が他に浮かばないのですいませんね。
年末に三谷幸喜と清水ミチコのラジオを文字起こしした本読んでたんですよ。
ちょっと前のだけど面白かったです。
二人とも各々の専門分野や興味に対する知識をしっかり持ってることと、観察眼がエッヂ利きすぎてて超面白いです。
三谷幸喜は度々流行る映画や古畑任三郎だけじゃなくて、大河ドラマの新選組!!とか真田丸の脚本もやってるんですけど、歴史オタクなんですね。
その三谷幸喜がこのラジオの中でぽろりと名前を出した歴史上の人物がいて。
大黒屋光太夫という人なんですけど。
正直、僕日本の歴史本当に本当に本当に好きじゃなくて。
この人が教科書に出てきたかどうかも知らないんですけど。どうなのかしら。
大黒屋光太夫は江戸時代に、日本の歴史上で初めてロシアに漂流して帰ってきた人なんです。
ただ帰ってきたわけじゃなくて、当時のロシア帝国の帝都であったサンクトペテルブルクまで行って、女帝のエカテリーナ二世に謁見して許可を貰って帰ってきた人なんですよ。
え~~~~~面白そうじゃない~~~~~!!?
あの歴史の何が嫌いって、僕もう小さい頃から海外とか好きだし海外にばっか興味あったのに歴史にはあんま海外が出てこないんですよ。いや出てきてたんでしょうけどこんなん歴史勉強しなかった言い訳なんでしょうけどまあ出てこないってことにしといてください。永遠に鎖国してた国、日本。
小説読むのは好きでも、歴史小説だけは読まなかった。歴史が不勉強だから背景があんまよくわかんなかったりするし。登場人物の名前とか覚えられないし。
って思いながら調べたら割と最近書かれた小説を発見。
その名も大黒屋光太夫。そのままですね。
これなら読めるかなーとkindleで購入するもなんとなく放置。。
しかし読み始めたら数日で上下巻読み終わしてしまいました!
ホントに脚色とか加えてないの?って思うぐらいに壮絶なストーリー。
大黒屋光太夫は船乗りとして十数人の船員と共に三重から江戸に向かう途中で嵐にあう。
すごいのはこの方、船が嵐で大破しまずはアムチトカ島(アメリカ領、当時はロシアの植民地)に流れ着く。
そして植民地管理者のロシア人に連れられロシア本土のカムチャッカへ。
そこから様々な都市を経てヤクーツク。
最後が女帝の謁見のためにサンクトペテルブルクへ。
鉄道もない時代にものすごい距離移動してるんですよ。
その間のドラマも壮絶。
まあそりゃ当たり前なんですけどただ移動してるだけじゃなくて行く先々で起こる起こるドラマ。
この大黒屋光太夫の話のキモは複数あります。
①気候
主人公の光太夫達は比較的温暖な三重の出身です。
きっと北海道出身だろうがキツいようなロシアの寒さ。
凍傷なんて生ぬるく、冷気にさらされた部分がすぐに壊死してくような環境。
もちろん江戸時代ですから医療技術の拙さもあり。
寒さにやられた者はどうなるのか。どう生き延びるのか。
②改宗
当時の日本は鎖国時代。もちろんキリスト教徒は日本人であろうと入国はできません。
しかし、ロシアでは異教徒は墓場に埋葬してもらえない。
日本に本当に帰れるかわからない環境の中、改宗しないままロシアで死んでしまえば自分の死体は街の端に打ち捨てられるのみ。
それだけでなく、なぜかロシアの役人はしきりに光太夫たちに改宗を促す。
しかし改宗してしまえば日本への帰国はままならなくなる!
光太夫たちはジレンマに打ち勝てるのでしょうか。そしてなぜロシアの役人は漂流民たちに改宗を促すのか。
③言語
当時は鎖国もしてましたし、日本のヨーロッパの貿易先はオランダのみ。
オランダもオランダで資源が豊富な日本が他のヨーロッパ諸国に興味を持たないようあまり他国の情報は流していなかったそうです。
そうなると一般市民はロシアの存在なんかほぼ知らない。ロシア語なんて話せるわけもない。
その中から『これは何ですか?』から覚え生き抜くためにロシア語を習得していく光太夫たち。そしてロシア人とも交友を深めていくことに。
ロシア人との関りが光太夫の未来をどう変えていくのか。
ここらへんが面白いポイントだと思います。
大黒屋光太夫は歴史小説である以上に、サバイバル小説だと思います。
まず第一に気候が厳しい。そして第二に帰国とロシア定住のジレンマ。なにより未知の人々との交友。
脱落や離別、出会いなど本当に史実かと疑うほどのドラマティックさ。
めちゃめちゃ面白かったのでぜひ読んでみてください。
光太夫の生きざまや物事へのスタンスはちょっと自分の人生の参考にもなります。
僕が脚本家だったら大黒屋光太夫で大河ドラマ書きます。でも難しかろうな。
ちなみに同じ大黒屋光太夫についての本はいろいろ出てますが、僕が読んだのはこちらです。
こちらは出版も比較的最近で、資料がその後見つかったため内容も濃く、エンディングも史実の通りとなっています。
ただ、こっちの方が短いです。なのでお好きな方を。
岩波新書や岩波文庫でも光太夫についての資料は出ているので、日本に帰ったら読んでみようと思います。
ちょっと歴史小説も悪くないかなと思い始めた2018年はじめでした。