書評20180221:ニューヨークで考え中(近藤聡乃)
ちょっと前に『A子さんの恋人』という漫画を薦められ読んだ。
ニューヨーク帰りの漫画家、優柔不断で言葉足らずな主人公A子さんがそれぞれ別れきれず東京とニューヨークにいるふたりの恋人(って言うにも微妙な関係だけど)とすったもんだしたり、A子さんの友人らがまたすったもんだしたりする話なんですが。
超面白い!!すごい!!やめられない!!みたいな感じではなく連ドラ的な、なんか割と人間味あってついダラダラ読み続けてしまうみたいな……全然褒めてないっぽいんですが褒めたいんですよ僕は!
展開が衝撃的!みたいな面白さよりあ~わかる~みたいな面白さ。
ちょいちょい読み返したりしてて。
とにかくすごく漫画を描くのが上手い作者だな!と思って作者名を調べてみると。
近藤聡乃。
すっごい見たことある!って思ったらYouTube黎明期くらいに流行ってた、たまの『電車かもしれない』のアニメーションPVを自主作成してた人でした。たぶん美大の課題だったんかな。
モノクロ映えする世界観とか、細部の描き込みとか、たまの音楽も相まってすごく中毒性のある動画で。
お~~~この人~~~!!ってなり日本帰国時に他の著書も購入。
それが
ニューヨークで考え中
美大卒業後、しばらくして文化庁在外派遣研修員に選ばれニューヨークに派遣された筆者。
そして研修期間終了後もそのままニューヨークに住んでしまいその日常を描いたコミックエッセイ。
こちらもニューヨークでものすごい衝撃的な出来事が待ち受けている!!とか人生を変える出会い!!みたいなことではなく、淡々と海外での日常を描く感じ。
だけどそれが心地よくて何度も読んじゃう。
海外に住んでる人にとってはあ~そうだよね~みたいな部分も多いし、日本に住んでいる人にとっては海外に住むってこういう感じなんだ!みたいな。
日本にはなかなかいないタイプの人と街中ですれ違うとか、外食についてとか、少し遠出をした話とか、持ち寄りパーティーに何を持ってくとか。
A子さんの恋人もそうだったけど、すごく1話の流れと結末が上手なのと、このニューヨークで考え中については文字も手書きでなんかすごく安心感がある。
漫画家に留まらず、芸術家として成功している人なのに気取ったところもなくて日本の食材や外食の値段とか、靴を褒められた話とかすごく庶民的な部分もあってそこも好き。
ニューヨークが特別な街だからこの漫画を描いてる、っていうよりこの筆者の日常を描く上であくまで舞台がニューヨークだった、みたいな印象。
ニューヨークって言ってもSATCとかGossip Girlみたいなマンハッタンが全てじゃないんだな…と気づかされる。
あと、生活についてだけじゃなくて、海外に住むにあたってメンタリティ的な部分も結構同意する部分が多い。
僕も、こうして海外で暮らしているうちに、もし日本がなくなっちゃったらどうしよう!とかふと不安になる瞬間がある。
何があるかわからないし、何かが起こらないとも言い切れない世界だと思う。
そういう中で、もし日本とか、東京がなくなったらどうしよう、って思う瞬間があるんです。
激しくなくとも海外生活のちょっとした陰と陽みたいなところを描いている点もおすすめ。
なんか、なんとなくほっこりしたもの読みたいな~って感じの人はぜひ読んでみてください。
2巻も最近でました!
恋愛ドラマとか好きな人はA子さんの恋人も併せて読んでみてください!